Webを活用した販促活動でSNSマーケティングは外せない要素となりました。検索エンジンからSNSへの移行はマーケティングの考え方そのものを変える必要があります。
2000年代初頭まではマスマーケティングが主流であり、ピラミッドの上層にいる企業が、一方的に人々に情報を流していました。その後の検索エンジンによるWebマーケティングは、GoogleやYahoo!を企業が活用し、販促活動を行います。いわばマスマーケティングに近い巨大なプラットフォームを使った一方通行の販促手法でした。
しかし、SNSはTwitterやLINE、Instagram、Facebookなど様々なプラットフォームが存在し、企業とユーザーがコミュニケーションを取り合う双方向型のマーケティング活動です。その特性やメリット・デメリット、企業の具体的な事例を理解しなければ十分な成果が期待できません。
目次
SNSマーケティングは、SNSを活用して集客や購買へと結びつける活動です。総務省の「通信利用動向調査報告書(企業編)」によると、2017年の段階でSNSを活用している企業は36.0%に上り、特に不動産業は2016年の46.2%から58.7%、金融保険業は同39.2%から50.7%に急伸するなど、マーケティング施策として取り入れる企業が増加しています。
活用目的として最も多いのが、「商品や催物の紹介、宣伝」で67.9%、次いで「定期的な情報の提供」が53.0%となっており、マーケティング施策として取り入れている企業が圧倒的です。今やSNSは企業活動に欠かせないものとなりました。
同じく総務省の「通信利用動向調査」によると、2020年にスマートフォンを保有している世帯の割合は86.8%となり、2019年の83.4%と比較して3.4ポイント上昇しました。保有比率は毎年上昇しています。また、個人がSNSを利用する割合は2020年に73.8%となり、2019年の69.0%と比較して4.8ポイント増加しています。
世代別に見ると6歳~12歳の伸び率が13.5%と高く、将来的にSNSを使いこなすのが当たり前となる時代が見えてきました。また、巣ごもりの影響によってSNSで時間を消費するユーザーが増えたことも要因の一つにあります。
個人がSNSを使う目的は、「知人とのコミュニケーション」が89.2%でトップですが、次いで多いのが「知りたいことについて情報を探すため」で62.1%です。多くの消費者がSNSによって情報を集める時代となり、知らない情報はGoogle検索で調べるという行動様式に変化が表れています。
アプリ開発を行う上場企業ガイアックスの調査によると、BtoBマーケティングでSNSを活用する企業は68.9%にも上り、BtoCのみならずBtoBにおいてもSNSマーケティングが欠かせないものとなっています。これは個人の情報の取り方が、GoogleからSNSへと大きく変化していることが背景にあります。
SNSマーケティングの施策は大きく3つに分類できます。公式アカウントの運用、インフルエンサーの活用、広告です。
公式アカウントはフォロワーを多く集め、商品やサービスの認知拡大や、ブランド構築を行う目的で運用されます。
SNS運用支援を行うテテマーチの調査によると、Instagramの公式アカウントのうち、プロフィール閲覧率が最も高い業種は美容サロンとなっています。これはInstagramのユーザー層が20〜30代の女性に集中しており、美に興味関心が集まっているためです。SNSはプラットフォームごとにユーザー層や特徴が異なります。特性を理解して運用することが重要です。
マーケティング支援のネオマーケティングの調査では、インフルエンサーが企業案件を受けた際につけるハッシュタグ「#PR」がついている投稿での購入経験があるとの回答は22.0%に上りました。影響力の強いインフルエンサーは数百から数十万のフォロワーがついています。その影響下にある人のおよそ20%が、購買に繋がる行動を起こす可能性が高いことを示唆しています。
インフルエンサーを活用したプロモーションは瞬発力に優れており、化粧品や美容グッズ、飲食店、映画の宣伝などでよく使われています。
各プラットフォームでは広告の配信ができます。SNS広告最大の特徴が、ユーザーを細かくセグメントできることです。Twitter広告では、年齢性別はもちろん、端末モデル、デバイス、キャリア、ユーザーの興味関心のある分野まで、詳細な設定が可能です。
セグメントによって精度の高い広告配信ができます。
SNSマーケティングにはどのようなメリットがあるでしょうか?
総務省の「情報通信白書(2015年版)」によると、SNS利用者の5割以上が「いいね」や「リツイート」機能を利用して情報を広めようとしていることが示されています。17%はほぼ毎日拡散機能を使っているとの結果が出ました。情報拡散する行動に年代格差はなく、どの世代でも積極的に拡散機能を使っています。
情報拡散の基準として挙げているのが、「内容に共感したかどうか」が46.2%、「内容が面白いかどうか」が40.4%で他を圧倒しています。SNSマーケティングにとって「共感」や「面白さ」を演出することが重要です。
拡散効果の高さは、企業のブランド選好度を上げることにも役立ちます。台湾本社のPC、スマートフォンメーカーのASUSにその成功事例があります。同社のスマートフォンユーザーが端末を落としてしまい、画面を割って壊してしまいました。失望する様子をツイートすると、ASUSの公式アカウントが以下のように反応したことが話題になりました。
あなたが落としたのは、この金のZenFoneですか?
|📱| ^_^ |📱|
| ◎ | (´・ω・)| ◎ |
\\ ⊂ ⊃ //
(⌒(⌒(⌒)⌒)⌒)
(⌒(⌒(⌒)⌒)⌒(⌒)⌒)
投稿に添付されていた画像は、ASUSの最新型スマートフォンでした。ユーザーは、公式アカウントの働きかけによって壊れた古い端末から最新版へと乗り換えることができたのです。
ASUSの投稿は3,600を超えるリツイートと2,600以上のいいねを獲得。一連のやり取りは多くの人の知るところとなりました。そのやり取りの面白さが人を惹きつけただけでなく、顧客主義のブランドであることを印象づけられました。拡散効果によって一般消費者のブランド選好度を上げた好例です。
マスメディア全盛時代の企業販促は一方通行でした。SNSの登場によって、コミュニケーションが重視されるようになりました。特に公式Twitterはユーザーと気軽にコミュニケーションがとれるツールです。
公式アカウントのフォロワーが433,000のキングジムは、一般ユーザーによる自社製品の投稿を多数リツイートしてます。巨大アカウントにリツイートされることで、ユーザーの投稿が多くの人に見られることとなり、承認欲求が満たされます。それによってブランドに対する好意度が上がり、キングジムの別の製品を投稿しようとするモチベーションにも繋がります。これも一種のコミュニケーションです。
コミュニケーションをキャンペーンに活かして成功しているのが製菓の明治です。「きのこの山」か「たけのこの里」かという論争が消費者の間で巻き起こることを利用し、キャンペーンを展開しています。どちらが好きか、という参加型のキャンペーンになっていることが特徴で、企業とユーザーがコミュニケーションをとっています。
SNSはメッセージのやり取りだけでなく、意識調査やアンケート調査、参加型キャンペーンなど、双方向型のコミュニケーションツールです。
かつてブランドイメージを構築するためには莫大な費用が必要でした。テレビCMや雑誌に大量の広告を出稿し、高額な支払いが発生するモデルやカメラマン、演出家を起用する必要があったからです。しかも巨額の宣伝費を投じても、思うような売上に繋がらないこともありました。ブランド構築目的の宣伝は短期的な成果と直結しづらいためです
しかし、ソーシャルメディアはアカウント1つで手軽に始められ、世界観を醸成する上で強力なツールとなります。
Instagramでブランド構築をした成功事例として知られるのが、京都のお茶・和菓子店「伊藤久衛門」です。京都を中心に国内5店舗を運営している会社ですが、Instagramのフォロワー数は4.2万人と人気のアカウントに成長しました。同じ和菓子店の亀屋万年堂の3,528と比較するとその強さが際立ちます。
伊藤久衛門のInstagramは社内のWeb担当者によって運用され、使用している画像はECサイト用に撮影しているものを転用していると言います。つまり、Instagramの運用コストが低く抑えられているのです。写真を厳選してブランドの世界観を構築し、ファンとなるフォロワーを惹きつけました。
ソーシャルメディアはプラットフォームごとにユーザーの特性が異なります。
Instagramは20代〜30代の女性がユーザー層の中心です。画像による訴求力に強みがあり、写真映えが重視されます。美容やグルメ、旅行など、言葉で説明しなくてもその特徴を伝えることができます。画像がメインなので、誰でも手軽に運用、投稿ができます。化粧品の販売会社やレストラン、洋菓子店、ホテルなどが若い女性に訴求するために使うケースが目立ちます。
Instagramは画像を投稿して相互にやり取りするプラットフォームだと捉えられがちですが、ユーザーの利用動向に変化が生じています。SNSサービスを提供するカンリ―の調査によると、若者が飲食店探しで使うツールでInstagramを挙げた人が31.8%に上りました。ホットペッパーの36.4%に次ぐ割合の高さです。
Google検索よりも、Instagramの情報を信用するようになっており、積極的に活用する傾向が目立ちます。
飲食店探しはGoogleやグルメメディアという時代は終りを迎えようとしています。20代〜30代の女性客を獲得するためには、Instagramを使ったマーケティングが欠かせません。裏を返すと、その行動やプラットフォームの特性を活かし、効率的な集客に繋げられます。
TikTokは圧倒的に10代〜20代の男女のユーザーが多くなっています。ユーザーはテレビを見る感覚で動画を消費しており、写真以上に分かりやすいことが特徴です。10代の若者を中心として、TikTokで見つけた面白そうな動画をYouTubeで確認するという流れができつつあり、YouTubeの入口として機能している側面もあります。
SNSはユーザーが予め絞られており、利用特性も事前に把握できます。それだけ、戦略を構築しやすいと言えます。
メリットが高い一方で、デメリットもあります。デメリットをカバーするためにはどうすれば良いかを考えることが重要です。
Googleはアナリティクスや検索順位計測ツールなどを使い、キーワードの表示順位、サイトへの流入状況、遷移率、コンバージョンに到達した数などの細かな数字を詳細にとることができました。その数字を確認し、どこが修正すべきポイントなのかを出しやすいのが特徴でした。PDCAを回しやすかったのです。
しかし、SNSは細かな数字をとることができません。インプレッション数やリーチ数、プロフィールが見られた数などを計測することはできますが、それがどの程度成果に繋がったのかがわかりません。
そのため、公式アカウントの運用やキャンペーンの実施、インフルエンサーを活用しても、リーチ数やインプレッション数をまとめることになり、それがどれだけ売上に貢献したのか分かりづらいのです。これは特にWebに疎い上司や経営者に報告する際のデメリットとなります。活動を十分に理解してもらえないことが多いからです。結果として、SNSマーケティングを終了しようという意思決定に繋がりかねません。
SNSマーケティングは目標達成のためのKPIを構築しづらい特徴があります。しづらい理由は大きく2つあります。1つは計測できる数値が限られていること。もう1つは不測の事態が起こって数字が増減することです。
SNSで計測できる数値をもとに何とかKPIを設定したとしても、数字の振れ幅が大きく、構築した意味がないことがよくあります。インプレッション数においては、見込みの数字と数千単位でズレが生じることが頻繁にあります。そうなると、何をどう改善したら良いのかがわかりません。PDCAが回しづらいのです。
効果が出るまでに時間がかかることもデメリットの1つです。伊藤久衛門のInstagramは、1年半かけて1万フォロワーを獲得したと言われています。企業の多くは素早く効果的な販促施策を探しており、1年以上かけてようやく成果らしいものが出る施策に多額のコストをかけることができません。
SNSマーケティングを実行する際は、経営者や役員など意思決定者の理解を事前に得ておき、チームに巻き込みながら進めることがポイントです。
TikTokを運営するバイトダンスの日本法人は、2019年7月から2021年12月末までで、20名のTwitterインフルエンサーに対価を支払いながら、PRであることを消費者に伝えなかったとして公式に謝罪しました。
SNSマーケティングでインフルエンサーを活用する際はステマでの炎上に注意してください。バイトダンスはサービスや商品の紹介ではなく、コンテンツの拡散行為だったため、広告表記が必要という認識がなかったとしています。
バイトダンスがこのように回答しているのは、ステマを直接規制する法律が存在しないことが背景にあります。法規制があれば、それに従うほかありません。ステマはグレーゾーンであり、認識に差が生じています。しかし、消費者がそれを宣伝行為だと感じれば、バイトダンスのような炎上へと発展しかねません。
法律に抵触しないとはいえ、消費者庁は口コミによるなりすましのサクラ記事が景品表示法違反の検討事項として検討されると示唆しました。今のところ、ステマが景品表示法違反となった例はありません。しかし、インフルエンサーの社会的な影響力が強くなった今、いつまでも見過ごすわけにもいかないでしょう。
なお、景品表示法違反と指摘されると、消費者庁のページに企業名が公開され、報道対象となって社会的な制裁を受けます。場合によっては課徴金納付命令が下されます。
炎上を防止するためには、投稿内容のチェック体制を強化し、運用における明確なガイドラインを設けて施策を実施することが重要です。
各SNSはユーザー層や特徴が異なります。マーケティング施策を固める前に、プラットフォームの違いを抑えてください。施策投下における成果に大きな差が生じます。
■プラットフォームの特徴
プラットフォーム | 中心となるユーザー層 | 国内の利用者数 | 特徴 |
20代~30代女性 | 3,300万人 | 画像、動画のビジュアル特化でブランド構築に繋げやすい | |
10代~30代男女 | 4,500万人 | 拡散力が強く、ユーザーとコミュニケーションを取りやすい | |
20代~50代男女 | 2,600万人 | 実名による安心感があり、経営者などの有名人が多数利用している | |
LINE | 20代~30代男女 | 8,600万人 | 利用者数が多く、認知を広げやすい |
参照
Instagram / Twitter / Facebook / LINE
特筆すべきなのが、LINEのユーザー数の多さです。アクティブユーザーの中心は20代~30代の男女ですが、老若男女問わず親しまれています。それだけ影響力の強いプラットフォームに成長しましたが、プロモーションへの活用はあまり進んでいません。これはLINEを活用したプロモーションの難易度が高いことや、成功事例が見当たらないためにそもそも運用へと至らないケースが見受けられます。
LINEビジネスはLTVの向上を狙えるプラットフォームであり、使い方によっては強力なツールになります。
次に企業の成功事例を見てみましょう。
公式アカウントを運用して成果を出している企業の事例です。最も手っ取り早く始められる公式アカウントですが、その中身は奥深いものがあります。どの会社も戦略を練り込んでいることが特徴です。
ドミノ・ピザはTwitter、Instagram、TikTokの公式アカウント運用に力を入れています。各プラットフォームの特性をよく抑えています。
Twitterではコミュニケーションを重視しています。2021年5月には、「ピザライスボウルはドリアなの?緊急アンケート」を実施しています。この投稿は360のリツイート、562のいいねを獲得しました。ユーザーが企画に参加することで商品の認知を得るだけでなく、ドリアなのか、ピザなのかという興味を持たせることで来店のフックとなります。
Instagramは憧れが集まる場所というテーマを設定し、海外から参考になる画像を多数集めてそれと似た切り口で投稿しています。プラットフォームの特性を把握し、それをブランド構築に活かす取り組みです。
TikTokは近年特に力を入れています。共感と発見がテーマになっており、トレンドに乗ることが最も重要なSNSと位置づけています。Twitterでドミノ・ピザの箱がかさばるという投稿を見つけると、水に濡らして畳む方法があるとTikTokの動画で投稿し、多くのシェアを獲得しました。
ドミノ・ピザは各SNSの違いや特性を分析し、それに合致する投稿を重ねています。よくInstagram、Twitterで同じ投稿をしている企業アカウントを見かけますが、そうした運用で成果を出すことは難しいでしょう。
コカ・コーラは公式Twitterで多くの共感を呼んでいます。2018年1月に「コカ・コーラ ピーチ」を期間限定発売しました。発売前にイメージキャラクターである綾瀬はるかさんの動画を投稿しました。この投稿には4万のリツイート、1.2万のいいねがつきました。動画の中で世界初のコーラであることが明かされますが、フレーバーは明かされません。
その次に何のフレーバーかを回答するクイズ形式の投稿を行っています。この投稿も1,000以上のリツイート、いいねを獲得しました。発売直前にピーチであることを明らかにする投稿をしています。その後キャンペーンを実施。ひと足先に「コカ・コーラ ピーチ」を体験しようという内容で、4.9万リツイート、1万いいねを獲得しました。
一連の活動は、ブランドへの共感を集め、参加、拡散するというSNSの特性を利用したプロモーションです。企画の段階で進め方が見事に構築されている事例です。
ローソンはLINEを活用したマーケティングを行っています。人気を集めているのが、人気チャットボット「ローソンクルー あきこちゃん」です。フォロワーは2,500万を超え、1,000万以上はブロックされていないブロック率が低いアカウントです。
ローソンは顧客の接点となるLINEアカウントを定期的に利用してもらい、クーポンや新商品情報の配信に役立てています。
フォロワーを多数抱えるインフルエンサーを活用した事例です。依頼をしやすい半面、費用が高額になりがちです。何を目的とするのかを明確にする必要があります。
GU
2020年に人気YouTuber「水溜りボンド」をプロモーションに起用しました。2020年11月時点でのチャンネル登録数は435万を超えており、若者を中心に影響力の強い2人組です。GUの商品とコラボレーションした動画は3カ月で100万再生を超えるヒットとなりました。
動画は商品を分かりやすく伝えることができ、特に若い世代に響きやすいコンテンツです。拡散されることによって、多くの人の記憶に残ることとなります。
無印良品
Instagramで活躍するインスタグラマーを起用し、商品の使い方に関する投稿を行いました。収納術という女性に響きやすい内容であり、プラットフォームと共感を呼ぶ仕組みを上手く組み合わせた事例です。
サントリー
サントリーは人気料理研究家のhigucciniを起用し、料理とそれに合う飲み物の提案をしました。投稿はInstagramを中心に行われ、サントリーの公式アカウントでも連動して商品の紹介やキャンペーンを実施しました。
SNSの広告を活用した企業の事例にはどのようなものがあるでしょうか?
オイシックス
オイシックスはFacebook広告を活用して定期購入者の獲得を行いました。新規獲得の効率、定期購買の引き上げ率を総合的に判断すると、他の広告と比較してパフォーマンスが良いとセミナーにて回答しています。
購買行動に繋がりやすい広告の筆頭として挙げられるのが、リスティング広告です。顧客が望んでいるキーワードに沿って広告を出せるため、もともと何らかの課題を抱えていた顧客をサイトに誘導できます。
オイシックスはリスティング広告とFacebookが重要な顧客媒体になっているとしており、その効果は高いことが示されています。
SNSの特性を理解し、メリット・デメリット、企業の成功事例を把握すると、成功するポイントが浮かび上がってきます。ここでは、成功へと導く要因を6つ紹介します。
①目的の明確化
②KPIの設定
③ペルソナの設定
④目標達成のための戦略構築
⑤長期施策であることの理解
⑥担当者の役割分担
SNSに限りませんが、マーケティングを行う際は目的を明確にしてください。飲食店の例を考えてみましょう。売上を上げたいという大命題があったとします。飲食店が売上を上げる方法は大きく2つです。客数を上げるか、客単価を上げるかです。
客数を上げるのであれば、集客目的のマーケティング施策が必要です。客単価を上げるのであれば、単価の高い料理を開発してそれを市場に浸透させるブランド構築寄りの施策が必要です。
集客かブランディングか。これだけでは、まだ要素としては大きすぎます。集客力を強化したいと考えた場合、新規顧客を増やすのか、リピーターのリピート頻度を高めるのか。昼の集客力を高めるのか夜なのか。このように要素を分解することがコツです。
例えば昼の時間帯は満席で、これ以上顧客が来ても対応しきれないのであれば、夜の集客に力を入れようとなります。そうすると、何をすべきなのかが見えてきます。
目標とKPIを設定することも重要です。KPIを設定するメリットは3つの要素に集約されます。1つはPDCAサイクルを回せること。もう1つは経営者などの意思決定者の理解を得やすいこと。そして、予算やコストを把握しやすいことです。
SNSマーケティングはKPIを設定することが、非常に難しいプラットフォームです。あまり詳細を作り込まず、大まかな設定をすると良いでしょう。例えば、公式アカウントを運用するのであれば、半年で1万フォロワーの獲得を目標に設定するといった具合です。
1万フォロワーを獲得するためには、2日に1回は投稿が必要だ、2か月に1回はフォロワー獲得キャンペーンを実施しなければならない、そのキャンペーン1回当たり3,000フォロワーの獲得が必要だといったKPIが見えてきます。
意思決定者をプロジェクトに巻き込むことも重要です。キーマンの理解を得ておかないと、プロジェクトが中途半端なところで打ち切りになりかねません。決裁者はコストを投じているものが、何を目指していて、どれだけの成果を見込めるのかを常に気にしています。目標やKPIがない施策にコストを投じることを無駄だと感じることが多いです。
KPIを設定すると、工数や発生する費用が見えてきます。これにより、稟議を通しやすくなるでしょう。
SNSマーケティングは特にペルソナの設定が重要です。これは双方向型のマーケティング施策であることと関係があります。「共感」がカギとなるSNSは、ユーザー層を深く理解しなければ効果が出ません。
ペルソナを作り込む際、年齢や名前、住所、趣味、交友関係などをずらっと並べただけのものがあります。人物像のたたき台としては有用ですが、それを作り込んだだけではあまり意味がありません。ペルソナを何のために作るのかを明確にしてください。チームや関係者とコミュニケーションを円滑に図るために必要なものです。
「この人はこのような情報を本当に欲しているか」「キャンペーン内容はペルソナ像に合致しているか」そのような議論をするためのベースになるものです。その目的のためにペルソナを設定していることを見失わないようにしましょう。
ペルソナは一度設定したら終わりではありません。状況や時代に合わせて変える必要があります。定期的に見直しを図りましょう。
カスタマージャーニーマップの作成もお勧めします。カスタマージャーニーマップとは、ユーザーが購買へと至る顧客体験をマップに落とし込んだものです。認知、検討、比較などの各ステージにおける顧客の迷いや離脱を俯瞰的に可視化できます。
カスタマージャーニーマップは横軸に認知、興味、情報収集、比較検討などの購買プロセスを置きます。縦軸に行動やタッチポイント、思考、感情をおいて項目ごとに書き込んでいきます。
作成したマップをどのように使うのかを理解することが大切です。これは、顧客がそれぞれのステージで離脱するプロセスを防ぐためのものと考えてください。例えば、認知がInstagramなのであれば、離脱する要素を書き込みます。「利用者の投稿にブランドのハッシュタグが入っていない」「せっかく投稿してもInstagramで目立つ色じゃない」「利用者の投稿を見たユーザーが使用しているところをイメージできない」などです。それを解決するためにはどうするのかを考えます。
ペルソナ、カスタマージャーニーマップは何度も書き直してプロジェクトとともに成長させることがポイントです。
戦略を決め、戦術を固めます。戦略の構築は非常に重要です。先ほどの飲食店の例を見てみましょう。夜の集客を強化するという方針を打ち出したとします。その店は中華料理店で、アルコールと料理をセットにした「ちょい飲みメニュー」を開発したとします。
自ずと、ターゲットは30代の独身男性会社員と狭まります。ターゲットが決まったら、次に購買に至る行動様式に合わせたフレームワークを使い、戦略を立てます。代表的なものにアイドマがあります。Attention(注意)、 Interest(関心)、 Desire(欲求)、 Memory(記憶)、Action(行動)の頭文字をとったものです。
例えば、瞬間的に集客力を上げ、そのうちの3割をリピーターとして再利用を促すという戦略を考えた場合、注意・関心・欲求をカバーできて影響力が強い動画系インフルエンサーにプロモーションを依頼します。来店した顧客に公式TwitterのフォローやLINEビジネスへの登録を促します。クーポンの発行などによって再来店を促進します。
公式Twitterで定期的にキャンペーン告知を行い、顧客の注意を引くといったように戦術が固まります。店内でTwitterをフォローするためのポップを作成する、トイレに公式アカウントができたポスターを貼るなどの細かな施策が見えてきます。
SNSマーケティングは施策が先行するものではありません。全体の戦略があって、それに結びつくものです。戦略の構築が不十分だと成果が見込めないと考えておきましょう。
特に公式アカウントの運用で言えることですが、成果が出るまでに時間がかかります。そこについての説明を決裁者を中心に十分行うことが重要です。どれだけ担当者が力を入れていても、打ち切りになることが少なくありません。SNSの運用は手間がかかるだけに、担当者の失望も大きくなります。
目的や目標、KPIをもって説明し、どれだけのコスト(工数・人・時間)がかかるのかを明確にしておきましょう。それだけで理解度は上がります。
担当者の担当領域を決めておくことも重要です。公式SNSの運用は想像しているよりも時間がかかります。Instagramは特別に写真を撮影するケースもあり、手間がかかることが特徴です。どれだけ時間がかかるのかを事前に算出しておき、担当を明確にしておきましょう。
すべてのプラットフォームを1人に集約することは、ノウハウの蓄積や一貫性を保てるという面で有利になります。しかし、アカウントの運用が属人的になってしまい、その人がいなければ誰もわからないことも起こります。
目的に応じて1人に集約するか、分散するかを決めておくとスムーズに動けるでしょう。
SNSマーケティングの最終ゴールは、顧客をブランドや会社のファンにすることです。これは検索エンジンによるWebマーケティングでは難しいものでした。しかし、コミュニケーションが可能なSNSはそれが実現できる土壌があります。共感をフックとしてブランド認知に繋げ、積極的にブランドの情報を拡散してくれるファンを作りましょう。
ただし、SNSマーケティングを内製化するのは限界があります。理由は大きく3つあります。1つは知識不足。もう1つはリソース不足。そして周囲の理解不足です。SNSマーケティングは長期にわたるプロジェクトで、早く始めた方が有利になります。しかし、見切り発車で動かしてしまい、成果がよくわからないまま終了するケースが後を絶ちません。これは、先の3つの要因が関係しています。
目的を明確にし、目標を設定した上でKPIを構築。それに沿った施策を確実に実施してスケジュール通りに進み、成果が見える形で記録をされていれば、プロジェクトが自然消滅することはありません。しかし、Webマーケティングの担当者に十分な知識がなく、そこまでの戦略を立てられる人は稀です。一人ですべてのSNSを運用するケースも散見され、半ば押し付けられている姿も見かけます。周囲の理解も得られず、アカウントが放置されてしまうのです。
SNSマーケティングを行う際は、外部のコンサルティング会社や運用代行を起用する道も検討してください。すでにノウハウを蓄積している会社は多く、豊富な知識や経験に裏付けされたアドバイスが得られます。戦略構築から一緒に行う会社もあり、ヒアリングを通して課題解決に向けた具体的なプロジェクトを組むことができます。
株式会社INFLUではSNSの運用、プロモーション、施策の実行など様々なサービスをまとめて依頼できます。WEBマーケティング支援も行っているため、SNSに限らず様々な手法でWeb集客を行うことが可能です。
特に戦略構築から実行支援に至るまでのコンサルティング業務に強みがあり、成果にコミットしたサービスを提供しています。
下記からお問い合わせが可能なので、ご興味がある場合は是非、一度ご連絡ください。