LINEチャットボットは会話をするチャットとロボットの合成語。ユーザーの疑問をシステムやAIが解決し、コストの削減を狙うものです。AIを搭載すると高度なやり取りを行うことができ、ユーザーのサービスに対する信頼感を高めることができます。
小規模な事業者にとって、カスタマーサポートを設けてユーザーのすべての質問に対応するのは困難です。
LINEチャットボットは救世主とも言える存在ですが、どこまでの対応が可能なのか、メリットとデメリットはどこにあるのかを把握しないままに導入することは危険です。サービスやブランドの選好度を下げてしまうことにもなりかねないからです。
この記事では、LINEチャットボットの概要や具体的な導入方法、企業の活用事例を解説します。
目次
チャットボットは不特定多数のユーザーと会話をするコミュニケーションロボットです。LINEチャットボットはLINE上で会話を行うもので、LINE公式アカウント上で展開されます。目的はユーザーとのコミュニケーションを円滑に行うことです。
飲食店であれば、営業時間やコースメニューの金額、店舗へのアクセス方法などのよくある質問をLINEチャットボットを介して説明することができます。簡単な質問をするために店舗に電話がかかるケースがありますが、チャットボットを導入することでスタッフの負担を軽減できます。
また、クーポンの配布もできるため、集客にも繋げられます。
LINEチャットボットはLINE公式アカウントを持つことが必須です。アカウントは無料で作れるため、開設のハードルは高くありません。
LINEチャットボットは大きく3つのパターンに分かれます。機械的に返答するだけのものと、回答する内容をAIが学習するもの、LINE公式アカウントの標準装備を離れてより高度なコミュニケーションをとるMessaging APIを活用したものです。
ユーザーからのキーワードを受信すると、機械的に決められたメッセージを返すというものです。
例えば、「営業時間」というメッセージが送られた場合、「月曜日~木曜日は〇時~△時(ラストオーダーは◇時)、金曜日・土曜日は…」といった形で営業時間に関するすべての回答を入れておくことで、ユーザーの疑問を解決することができます。ユーザーが「金曜日の営業時間」と入れた場合も、上の回答で満たせるため、別途回答を設ける必要がありません。
ただし、応用がきかないため、複雑な質問に答えることができません。例えば、仕入れによって内容が変わる「日替わりのおすすめ刺身」をチャットボットで返答することはできません。
LINE公式アカウントに標準装備されている、AIが会話の内容を判断してメッセージを返答する機能です。あらかじめキーワードを設定する必要はなく、「一般的な質問」「基本情報」「業種別テンプレート」「予約情報」という4つのカテゴリーから、AIが質問の意図を汲み取って適切なテンプレートを送信するというものです。
例えば、クレームだと判断されるメッセージを受け取れば、「一般的な質問」の中にある「クレーム」から「メッセージありがとうございます。改善に努めてまいります。」というテキストを自動的に選んでユーザーに返します。
応答できないメッセージに対しては、「質問の内容を理解することができませんでした。」といった言葉で対応します。
Messaging APIは、LINEが外部の開発者に向けて独自の開発ができるように解放している仕組みです。これを使うことにより、LINEが標準実装している機能以上のものを作ることができます。
例えば、ユーザーの検索条件を詳細に読み取ることにより、最適なサービスや商品を紹介することが可能になります。学習を進めることでフリートークをすることができ、ユーザーがコミュニケーションそのものを楽しめるようになります。
LINEの国内ユーザー数は9,000万以上であり、国民に広く浸透しているプラットフォームです。コミュニケーションインフラとして定着しており、”わざわざLINEを導入する人”は極めて少ないと考えて良いでしょう。そのLINEチャットボットはそのインフラを活用できる点が一番のメリットです。ユーザーにも提供する側にも大きな負担にはなりません。
そのほかのメリット、そしてデメリットはどこにあるのでしょうか?
チャットボットの導入は人件費の削減に繋がります。サービス内容によってはカスタマーサポートを設ける必要がありますが、メッセージの多くは利用方法に関するものや、クレームなど決まった内容に集約されます。そうしたメッセージに対応するマニュアルを作成している会社がほとんどです。
LINEチャットボットは、マニュアルに落とし込まれた内容を返答することができます。それにより、コールセンターの人員などを削減することができます。
サービスが複雑化する中で、ユーザーは様々な疑問を持つようになっています。ITスキルが高い人は公式ホームページや第三者の記事などから使い方をマスターできますが、大半の人はそこまで技術が高くはありません。
企業が十分に情報を公開していると認識していたとしても、ユーザーにとっては不十分だと感じることもあります。特にサブスクリプションモデルを採用しているサービスは、離反が高まることによるLTV低下は避けたいもの。ユーザーへのきめ細やかな対応が必須です。
AIやMessaging APIを使うことで、複雑なコミュニケーションをとることができます。早い段階から導入すれば、AIが学習を重ねて円滑に答えられるようにもなります。
LINEチャットボットは豊富なコンテンツがそろっています。アンケート機能を使うことによって、ユーザーのニーズや課題を把握することが可能です。モニター調査ツールとしても機能する点は魅力です。
そのほか、店舗の予約ができる予約機能やゲームなども提供することができます。
ユーザーは電話や問い合わせメールを送ることに心理的な負担を抱えています。電話が繋がらない、メールでの返答にタイムラグがあるなどの理由によるものです。LINEチャットボットを導入することにより、即時回答が可能です。
短文での質問が可能なため、問い合わせメールで長文を書く必要もありません。簡潔かつレスポンスが早いため、顧客満足度の向上が狙えます。
LINEチャットボットに標準装備された機能を使う限り、費用は発生しません。しかし、当然設定には時間がかかり、その分の作業が必要です。定期的なメンテナンスも欠かせませ
ん。これらもすべてコストです。
設定や管理にかけている工数に比して、利用者が多くないことも少なくありません。費用対効果を見ながら継続する必要があるかどうかを判断することも必要です。
LINEチャットボットは万能ではありません。一般的に、ユーザーが持つ疑問は一定の回答に集約されますが、あらゆる質問に対してAIが回答できるわけではありません。特にクレーム対応などにおいては、ユーザーの感情を刺激することにもなりかねません。
LINEチャットボットの回答には限界があることを、あらかじめ頭に入れておきましょう。その対処方法を決めておくことが重要です。
ユーザーの期待を100%満たす回答ができるわけではありません。ユーザーの満足度が高いことを全面に打ち出している会社や、ブランド構築に力を入れている場合、LINEチャットボットの回答が炎上のネタになり、信用力を落とすことにもなりかねないことに注意してください。
目的にもよりますが、LINEチャットボットはユーザー満足度を高めるための補助ツールという位置づけで、まずは試験的に導入することをおすすめします。最初からコスト削減を目指し、カスタマーサポートを手薄にしてしまうのは悪手と言えるでしょう。
AIはコミュニケーションを重ねることで最適な答えを返すものです。学習を重ねて精度を高めます。当然、AIを育てる、管理する手間がかかります。
育てればそれだけ有用なツールになりますが、時間がかかることも覚悟しましょう。正確な回答をすぐに求めるようなシーンにおいては、LINEチャットボットのAIは戦力外となるかもしれません。長期的な施策の一つとして導入を検討してください。
多くの企業がLINEチャットボットを活用し、ユーザー満足度向上やコスト削減、集客などの成果に繋げています。
ライフネット生命は、オペレーターによる相談も受けつけていますが、LINEチャットボットでの回答も行っています。コールセンターの営業時間内に電話ができない、チャットで気軽に問い合わせをしたいというユーザーからの要望に応えて導入しました。
保険選びをする「ラネットくん」というキャラクターを作り、保険料の見積もりや顧客に最適な保険を提案しています。
ライフネット生命のLINEチャットボットの特徴は、ほけん診断や保険料見積りの後、有人相談に移行することが可能な点です。自動応答と友人対応のハイブリッド型により、人が対応する前に顧客の相談内容やニーズ、課題を的確につかむことができます。
ライフネット生命では、KPIの一つとして設定している保険料の見積り件数が1.5倍に増加しました。
ヤマト運輸はLINEチャットボットを活用し、集荷に関する問い合わせや、再配達の申し込みなどに対応しています。
ヤマト運輸はLINEを効果的に活用しており、配達前の配達連絡、不在通知、配達日時の変更、LINE上での送り状の発行、集荷依頼を行うことができます。チャットボットはそうした機能の橋渡しとしての役割を担っています。
LINE導入前は不在連絡票に記載された電話やホームページにアクセスし、希望の配達時間帯を伝える必要がありました。電話での連絡は通話料がかかり、受け取る側からするとわざわざ電話をする手間もかかります。
LINEを活用することにより、顧客のストレスを軽減することができます。
日本郵便は「ぽすくま」というキャラクターを立ち上げ、LINEチャットボットを配達や集荷に役立てる取り組みを行っています。
LINEチャットボット上に問い合わせ番号を送ると、配達状況を確認することができます。再配達の依頼や郵便局で受け取る手続きも行うことができ、電話連絡が不要になりました。
ヤマト運輸と同じく、LINEチャットボットによってユーザーの満足度を上げています。
ヤマト運輸の成功例と並列して語られるのが、ローソンが運営する「ローソンクルー♪あきこちゃん」です。2016年に日本マイクロソフトが開発したAI「りんな」の技術を実装。天気予報や占い、ゲーム、ローソン食品をおすすめする機能などを提供しています。
各種コンテンツの中でも話題になったのが将棋。プロ棋士にも勝ったという「Ponanza」のシステムをLINEに組み込んだもので、腕に自信のあるユーザーを次々と打ち負かしたといいます。
楽しめるコンテンツを提供することで、ローソンとユーザーとの接点が生まれます。ローソンは月に2回プッシュメールを配信しており、メッセージの配信時はアクセス数が数百万件に跳ね上がるといいます。
LINEチャットボットで日頃からユーザーにコンテンツを提供し、飽きさせない工夫をしています。そうすることにより、クーポンなどのメッセージを届けてもブロックされづらいのです。
マーケティング施策の一つとして、LINEチャットボットを活用した好例です。
エアトリは2016年11月からLINEチャットボットの活用を始めました。国内航空券販売に関するユーザーからの問い合わせに、チャットボットが返答する取り組みを行っています。航空券の取得は様々なシーンが想定され、早朝や深夜を問わず問い合わせが多くあります。
LINEチャットボットが対応することで、ユーザーの不安を払拭できます。将来的には旅行特化型のコンシェルジュに昇華をし、旅の伴侶としてLINEチャットボットを活用してもらうという意欲的な取り組みを行っています。
2015年8月に登場して話題となったのがLINEのAIチャットボット「りんな」です。女子高校生型AIとして誕生し、話し方や回答の内容が10代の若者そのものだとTwitterなどのSNSで盛り上がりました。
人間と同じ文脈を踏まえて会話ができる会話エンジン「共感チャットモデル」を採用し、自然な文脈を紡ぐことでファンが増加。2021年3月時点で830万人の友だちができました。
「りんな」はローソンのLINEチャットボットに採用されるなど、ビジネスとしての活用分野が広がっています。こうしたAIは会話を重ねるごとに精度が上がるため、長い年月をかけて多くのユーザーと会話をした方が有利に立てます。
日本マイクロソフトは先行者としての優位性を獲得したと言えるでしょう。
LINEチャットボットで自動接客を実現したのがSHIBUYA109です。2017年4月から取り組みを開始しています。
ユーザーがLINEで友だちに質問するかのようにコメントを入力すると、LINEチャットボットが自動的に質問にあった回答を届けるというもの。商品情報や再入荷情報、おすすめの商品などを紹介してくれます。
企業のLINEチャットボット活用事例を見ると似通っている部分が多く、以下5つの要素に集約されます。
1.クーポンの配布
2.予約注文の受付
3.顧客が持つ課題の解決
4.情報(コンテンツ)の発信
5.キャラクターで認知拡大
飲食店や小売店において、LINEの友だちになる目的の多くはクーポンなどのお得な情報を得ることです。LINE限定の特別なクーポンを用意し、チャットボットで「クーポン」と入力するとそれを提示するといった使い方が想定されます。
飲食店の予約や、ECサイトの注文の受付もユーザーの要望が多い使い方です。飲食店においては、公式ホームページなどにアクセスし、予約ページに入って必要情報を入力しなければなりません。
しかし、LINEチャットボットで「予約」とコメントすれば、必要なフォームが自動的に流れてきます。ユーザーの手を煩わすことがありません。
保険の見積りや最適な商品の組み合わせの提案、航空券に関する問い合わせ、荷物の配達日時の確認など、これまで電話や問い合わせフォームで手続きしていたことが、LINEチャットボットで解決できるようになりました。24時間対応できる点は、ユーザーにとって極めてメリットが高いです。
ただし、チャットボットのみで対応するのも限界があります。契約や購買への後押しには人の手が欠かせず、ライフネット生命のようにハイブリッド型で対応するのが望ましいでしょう。
顧客との接点を持ち続けることが、ファンを醸成する上で欠かせません。ローソンはコンビニ関連の情報だけでなく、天気予報やゲームなどのコンテンツを提供することで、アプリの有用性を高めていました。
広い視点でチャットボットを導入することも有効な一手となります。
LINEチャットボットはコミュニケーションツールです。「りんな」のようにペルソナを作りこむことによってファンができます。想定される性格とAIの回答によるギャップが面白さを生み、SNSによって拡散されます。
チャットボットは機械的な返答にはなりますが、キャラクターを作れば見え方は変わってきます。そのキャラクターを育てることもマーケティング施策の一環となります。
自動応答メッセージとAI応答メッセージは、LINEの標準機能で作ることが可能です。
【自動応答メッセージ】
LINE公式アカウントの「設定」から「応答設定」を選択し、「チャット」にチェックを入れてください。
「応答モード」の下にある「あいさつメッセージ」を選択し、設定画面でコメントを入れます。あいさつメッセージは友だち登録をした人に対するメッセージになります。
「応答メッセージ」では、特定のキーワードに対するテンプレートの回答を選択することができます。どんなコメントを入れたら良いかわからないという人は、テンプレートを選択しても良いかもしれません。
【AI応答メッセージ】
「設定」から「応答設定」、「詳細設定」にある「スマートチャット」に変更します。サイドバーに表示されている「AI応答メッセージ」にチェックを入れます。
AI応答メッセージでは4種類のカテゴリーが用意されており、個別の設定が必要です。AIにもテンプレートの回答が用意されています。
外部に開発を委託する場合は、システム会社などに相談をしてください。
LINEチャットボットを使うのに費用は発生しません。ただし、ランニングコストがかかります。LINE公式アカウントは、メッセージの配信数に応じて従量課金される仕組みです。
フリープラン | ライトプラン | スタンダードプラン | |
月額固定費 | 無料 | 5,000円 | 15,000円 |
無料メッセージ通数 | 1,000通 | 15,000通 | 45,000通 |
追加メッセージ料金 | 不可 | 5円 | ~3円 |
「料金プラン」より
システム会社が開発するチャットボットには大きく2つの種類があります。シナリオ型とAI型です。シナリオ型のチャットボットは初期費用が5千円から20万円ほど。ランニング費用が月3万円程度です。AI型は初期費用が100万円~300万円で、ランニング費用が月20万円から50万円かかります。
手間がかかるAI型は高額になりがちです。費用対効果を見極めた上で依頼をしてください。
Messaging APIでLINEチャットボットを作成する場合は、初期・ランニングともに高額な費用が発生します。シナリオ型、AI型ともにそれだけの価値が見込めるのは間違いありません。
シナリオ型はユーザーの質問意図に沿ってシナリオを深堀りするタイプです。ユーザーが欲している内容を的確に回答することができます。問い合わせがそれほど多くはないものの、詳細な回答をしたいと考えている企業に最適です。
AI型はユーザーの質問意図を理解しようとします。質問の似たパターンを学習し、最適な回答をします。多種多様な質問がくる業種はAI型が向いているでしょう。
シナリオ型、AI型ともに顧客満足度を高めることに寄与します。ライフネット生命やローソンのように、顧客の課題をチャットボット上で解決したり、質の高いコンテンツを提供して顧客との接点を継続したいと考える企業には特に有効的です。
現代においては、サービスの問い合わせに対して簡潔かつ迅速に、という要望を持っています。電話できめ細やかに、丁寧に対応するだけでは不十分になりました。24時間対応可能なLINEチャットボットは、正にカスタマーサポートの一助となるツールです。
顧客満足度の向上のためにも、LINEチャットボットを導入することをおすすめします。
ただし、LINEチャットボットの設定は手間がかかり、簡単に行えるものではありません。また、サービスの内容によってはMessaging APIでシステムを組んだ方が有効な手段となることもあります。
INFLUはLINEなどのWebマーケティングを専門で行う会社です。LINEチャットボットの有効的な使い方だけではなく、LINE公式アカウントの運用サポートも行っています。組織が抱える課題をヒアリングし、戦略構築の支援も可能です。
LINEマーケティングに関するお困りごとがあれば、ぜひご相談ください。