「法人でなければ補助金は通らない」そのような勘違いはよく見受けられます。
個人事業主やフリーランスも法人と同じく補助金の利用ができます。
ただし、補助金を受け取るためには、補助金の種類と内容を理解し、決められた要件を満たさなければなりません。
また、補助金・助成金・給付金の違いがわからず、見当違いな申請をしてしまうことも少なくありません。
この記事では、個人事業主が利用できる補助金について解説します。
目次
3つの違いは明確に押さえてください。
性格が全く異なるものであり、場合によっては受け取る資格があるにも関わらず、そのタイミングを逃すことにもなります。
補助金は国や自治体が予算を組んで政策目的を果たすために交付するもので、必ず受け取れるものではありません。
事業者の支援をするものであることは間違いありませんが、政策目的を果たすことが重視されます。
そのため、要件が細かく定められ、事業計画や収支計画の提出が求められることがほとんどです。
予算は限られており、受け取る金額も大きいことから、応募者が多いのが特徴です。
審査が厳しく、補助金を受け取るハードルは高いと考えてください。
補助金の種類によっては、経過報告も求められます。
ただし、補助金によって環境に配慮した商品の開発や、DXの推進、事業転換など、業績や事業内容を大きく変化させる機会を得ることができます。
補助金申請のコンサルタントも多く、チャレンジしがいのある領域です。
助成金は補助金と同じく、国や自治体が支給しています。補助金との違いは、審査がないことです。
要件を満たしていれば、基本的には支給されます。
当然、要件を満たしていなければ、不支給となります。
事業者の主観的な判断と、支給する側の客観的な認識に相違が生じることがあり、不支給となることも珍しくはありません。
助成金は実績を示した後に支給されるため、後払いが基本となっています。
助成金は特に雇用関連のものが多数あります。
キャリアアップ助成金、労働移動支援助成金、人材開発支援助成金などです。
給付金は国や自治体が事業主や個人に対して支給するものです。
事業主を対象としたものと、個人を対象としたものの大きく2つに分かれています。
事業主を対象としたものでよく知られているのが、新型コロナウイルス感染拡大で事業活動に影響が出た人を対象とした「持続化給付金」です。
継続して事業を継続する意思のある人が対象であり、使用用途は細かく設定されていません。
事業計画の提出も求められません。
2019年と2020年の売上高を比較し、減少した分を支給します。
上限額は個人事業主で100万円、法人で200万円までに設定されました。
個人を対象とした給付金には、失業等給付、育児休業給付金、介護休業給付金、高齢者雇用継続給付金などがあります。
次に個人事業主とフリーランスの違いについて理解しましょう。
一番の違いは、税務署に開業届を出しているかどうかです。
提出していれば個人事業主、していなければフリーランスと定義されます。
ただし、個人事業主は個人として独立し、反復・継続して仕事を行っている人であり、事業内容は限定されます。
リサイクルショップや量販店などで品物を仕入れ、インターネットを通して取引する、いわゆる転売ヤーは事業の再現性が低いために認められません。
個人事業主は青色申告を行うため、白色申告よりも控除額が大きく、節税メリットがあります。
補助金や助成金、給付金について、個人事業主とフリーランスで違いが生じることはありません。
個人事業主が受け取れる補助金には、以下のようなものがあります。
それぞれについて詳しく説明します。
事業再構築補助金は、コロナ禍で激変した経済環境に適応するため、事業者の大胆な事業転換を支援する目的で設けられました。
中小企業だけでなく、個人事業主も対象となっています。
事業再構築補助金は複数の申請類型がありますが、必須要件となっているのが付加価値の増加。
補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0%もしくは5.0%以上増加する事業計画の策定が必須となります。
付加価値額は営業利益に人件費と減価償却額を足したものを指します。
第9回の事業再構築補助金の申請は2023年3月24日で締め切られましたが、今後も継続する見込みのある補助金です。
新規性が要件の中に盛り込まれており、新製品の開発や新たな市場の獲得、新事業の立ち上げなどを行わなければなりません。
それに必要な設備投資額の一部を補助金で埋め合わせるというものです。
例えば、個人事業主として居酒屋店を経営していたとします。
コロナ禍で客数が2019年比で6割程度となりました。
このとき、焼肉店への業態転換を計画したとします。
焼肉店はグリルや排煙装置などで、数百万円から数千万円単位の資金が必要です。
この場合、事業者は過去に焼肉店を運営していないなど、要件を満たせば補助金を受けられます。
補助金額は上限が設けられており、従業員数が5人以下の場合は100万円~500万円までとされています。
小規模事業者持続化補助金は、商工会議所の管轄地域で事業を営んでいる小規模事業者が対象の補助金です。
小規模事業者が複数年にわたって直面する制度変更等に対応するため、販路開拓に必要な費用の一部を補助するというものです。
販路開拓以外に、生産性向上・業務効率化に必要な費用の一部も支援します。
補助上限は通常枠で50万円、賃金引上げ枠で200万円です。
補助率は2/3。対象となる経費は、機械装置、Webサイト関連費、広告宣伝費、旅費、システム開発費などです。
2023年3月10日から第12回の申請受付を開始しています。
事業支援計画書発行の受付締め切りが5月25日。
申請受付締め切りが6月1日までとなっています。
補助金の活用事例は多岐にわたります。
例えば、中長期的に宿泊者数の慢性的な不足に陥っている旅館が、海外観光客を獲得するために外国語のパンフレットやWebサイトを作成することなどが考えられます。
2023年3月10日から公募が始まった小規模事業者持続化補助金には、これまでにない制度が設けられました。
インボイスへの対応を求められる(これまでの)免税事業者に対するインボイス枠です。
通常枠では、補助額が50万円~200万円でしたが、インボイス枠では50万円がプラスされます。
つまり、100万円~250万円が補助額となります。
当然、インボイス事業者に転換することが求められます。
ものづくり補助金は、革新的なサービスの開発、生産プロセスの改善を行うための設備投資を支援する補助金です。
正式名称を「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」と言います。
大企業ではなく、中小企業が利用することを想定しています。
個人事業主も申請することは不可能ではありませんが、補助金を受けるハードルは極めて高いと考えてください。
ものづくり補助金は経費の1/2を補助してもらうことができます。
1,000万円の製造装置を購入した場合、500万円が支給されます。
支給要件は中小企業と定められています。
従って、以下の規模を満たしている必要があります。
【中小企業の定義】
業種 | 資本金 | 従業員数 |
製造業・建設業・運輸業 | 3億円 | 300人 |
卸売業 | 1億円 | 100人 |
サービス業 | 5,000万円 | 100人 |
小売業 | 5,000万円 | 50人 |
ゴム製品製造業 | 3億円 | 900人 |
ソフトウェア業又は情報処理サービス業 | 3億円 | 300人 |
旅館業 | 5,000万円 | 200人 |
その他の業種 | 3億円 | 300人 |
資本金と従業員数の両方を満たす必要はありません。
採択率が高いのは、従業員数が6~12人の事業者であり、資本金を満たしていれば、個人事業主でも十分に申請できます。
ものづくり補助金は事業計画書を作成する必要があり、外部のコンサルタントなどに作成を依頼するケースも少なくありません。
また、支給されるためには、事業所内で事業化を担う人が必要であり、担当者を決める必要があります。
ここで紹介した補助金の中では、ハードルが高いと言えます。
事業を成長させる、あるいは安定させる方法として、貸付もあります。
貸付は返済義務がありますが、申請手続きに時間がかからず、審査も厳しくはありません。
補助金の申請は、場合によってはコンサルタントを雇う必要があり、負担が大きくなります。
貸付はさほど審査は厳しくありません。
場合によっては、無担保で個人事業主でも利用できます。
ビジネス環境の急激な変化で、業況が悪化している人を対象としたものです。
日本政策金融公庫が貸付を行います。
直近の決算期における売上高が前期、前々期と比較して5%以上減少しているなどの利用条件が設けられています。
融資限度額は4,800万円。
返済期間は運転資金の場合で8年に設定されています。
担保を不要とする融資で、利率は1~3%程度と低いのが特徴です。
個人事業主でも補助金を利用できます。
ただし、事業計画書の作成に力がかかるため、本業にも影響が出ることを覚悟しましょう。
思い切った設備投資を行いたい事業者にとっては、恩恵が大きいものであることは間違いありません。
事業を拡大したことで、安定的に成長できるかもしれません。
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