IT導入補助金は中小企業や小規模事業者が、課題解決に繋がるITツールの導入を支援する制度です。
業務効率化を図る管理システムの導入や、顧客獲得のためのECサイト構築費用、マーケティングプラットフォームを導入してデータを活用する際などに適用されます。
補助金額は5万円~450万円と幅広く、小規模なシステム導入にも適用されます。
新型コロナウイルス感染拡大以降、非接触を目的としたIT化が重視されるようになりました。
コロナ後の事業展開を行う上で、外すことのできない補助制度だと言えます。
この記事では、IT導入補助金の詳細や事例、申請のポイントを解説します。
目次
IT導入補助金の補助対象者は中小企業、小規模事業者(飲食、宿泊、卸・小売、運輸、医療、介護、保育等のサービス業の他、製造業や建設業等)が対象になっています。
売上を伸ばして経営を安定させたり、省人化や情報共有の徹底を図って業務負荷を軽減。
利益率を高めることを目的としています。
成功したケースに、以下のようなものがあります。
各項目について詳しく解説します。
顧客管理や販売管理が徹底しておらず、昔ながらの紙文化が残っている会社は未だ多く見受けられます。
その場合、取引先の変化や商品別の売上構成比率の変化などが把握できず、顧客開拓、取引先との関係構築、商品開発などの重要な業務を見誤ることも少なくありません。
顧客管理や販売管理をクラウドシステムを使ってデータで可視化。
売上構成比率の高い顧客や商品が把握でき、何に注力すべきかが見えてきます。
また、新規取引先を開拓する際のターゲットを絞り込むことにも役立ち、営業活動が活発化します。
需要予測もできるため、不良在庫を抱えるリスクも低減できます。
勤怠管理、給与管理システムを全てシステム化すれば、残業時間の多い社員を割り出すことが可能です。
残業が多い要因を洗い出すことで、業務の分散ができるかもしれません。
それによって残業時間を減らすことができます。
従業員のモチベーションがアップし、働き方改革を推進できます。
業務日報、営業報告書、スケジュール管理などを手帳や紙の書類で行うケースがあります。
これらを自動化することにより、出先での報告書の提出が可能です。
スケジュールを自動化すると、瞬時に事業部内の従業員の動きが見える化できます。
転記のミスやスケジュールの入れ間違いを防ぐことができ、業務を効率化することにも繋がります。
補助金を導入した事例に、どのようなものがあるでしょうか。
ここでは、実際の成功事例について解説します。
鉄道システムなどを運用する協和テクノロジィズは、IT導入補助金でRPAツールを導入。
定型業務を自動化して属人化された業務の改善に成功しました。
月およそ25時間の残業時間を削減しています。
導入したツールは「NEC Software Robot Solution」のRPA。
PCで行うマウス操作やキー入力などを自動実行させ、条件判断や繰り返し処理を行います。
入力時間が短縮できるだけでなく、入力ミスの減少、チェック時間の削減にも繋がりました。
単調な仕事はロボットに任せ、従業員は顧客対応など重要度の高い仕事を任せることができます。
従業員の仕事への満足度が高まり、モチベーションアップにも繋がったといいます。
伊豆高原でペンションを経営するアースルーフは、複数の宿泊サイトに掲載する嬢王を一元管理するシステムを導入しました。
情報更新にかかる時間が削減され、本来の接客業に集中できる体制を整えています。
宿泊サイトは様々なものがあり、宿泊プランなどを変更すると全てに対応しなければなりません。
しかも、一律に情報を発信できないため、顧客が混乱するという問題がありました。
そこで、宿泊予約サイト一元管理システム「かんざしクラウド」を導入しました。
このシステムによって課題が解決し、円滑に情報更新ができるようになりました。
更新業務が削減できるようになったため、積極的に宿泊プランの立ち上げを行うようになりました。
宿泊業のあるべき姿を取り戻しています。
IT導入補助金は、ITツール要件や機能要件などに応じて、大きく4つの枠が用意されています。
それぞれについて詳しく説明します。
通増枠は、「類型ごとのプロセス要件を満たすものであり、労働生産性の向上に資するITツールであること」がITツール要件(目的)として定められています。
プロセスとは業務工程を指します。
補助対象はソフトウェア購入費・クラウド利用料(最大2年分)・導入関連費です。
通常枠はA類型とB類型に分かれています。
A類型の補助額が5万円~150万円未満。
B類型が150万円~450万円以下です。
A類型はプロセス数が1以上、B類型は4以上となっています。
プロセス数は業務プロセスのことで、宿泊業を例にとると、「集客」「予約」「部屋割り」「チェックイン」「チェックアウト」「顧客管理」「売上管理」「スタッフ管理」「原価管理」「納品管理」「在庫管理」「施設管理」などがあります。
先ほどの事例で出した業務プロセスの効率化は「予約」でした。従って、プロセス数は1となります。
セキュリティ対策推進枠は、機能要件が「独立行政法人情報処理推進機構が公表する「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されているいずれかのサービス」と決められています。
補助額は5万円~100万円まで。補助率は1/2以内までです。
サービス利用料の最大2年分が補助対象です。
デジタル化基盤導入類型は、対象ソフトウェアが「会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、ECソフト」に限定されています。
会計や決済をシステム化することを主目的としたものです。
補助額は下限なしで最大350万円までに設定されています。
デジタル化基盤導入類型のポイントは、ハードウェアの購入費も補助の対象となっていること。
PCやタブレット端末は補助率1/2以内で、最大10万円までが支援されます。
複数社連携IT導入類型は、会計ソフトなどに加え、各種システムを導入する際に活用できるものです。
大規模なDX化を計画する際に有用なものです。
補助額の上限は3,000万円と高めに設定されています。
消費動向を分析するための、ビーコンやデジタルサイネージ、AIカメラなども補助の対象となります。
IT導入補助金の支給を受けるには、申請時にクリアしておきたいポイントがあります。
決して難しいものではありません。
補助金全般に言えることですが、補助金には対象となる経費があります。
IT導入補助金は、ソフトウェア、ハードウェア、ECサイト、ホームページ、Webアプリ、AR用コンテンツ、クラウドシステムなどの月額制のもの、消費税などが対象です。
製品の製造設備の生産性を上げるための機械、移動時間を節約する自動車などは、補助の対象とはなりません。
また、ハードウェアやソフトウェアは申請内容によっては補助対象として認められないこともあります。
ハードウェアが補助金の対象となるかどうかを簡単に判断する裏技の一つに、転売可能かどうかがあります。
転売可能なものの場合、補助金は出ないと考えると良いでしょう。
IT導入補助金の手続きは全て電子申請で行います。
補助金の受け取りを希望する事業者に対しては、IT事業者ポータル、申請者には申請マイページが付与されます。
申請する際は、IT導入支援事業者から申請ページの招待を受け、申請マイページの開設を行います。
IT導入補助金の目的の一つが生産性の向上です。
そのため、重視される指標に労働生産性があります。
労働生産性は従業員1人が、1時間当たりに生み出す価値を示しています。
数式では以下のように表します。
売上総利益(粗利)÷(従業員数×1人当たりの勤務時間)
IT導入補助金の対象事業者となるためには、補助事業実施後に労働生産性が1年後に3%、3年後に9%以上の数値目標を設定しなければなりません。
補助金で顧客満足度の向上や売上高の拡大を目指そうとしていたとしても、労働生産性についての事業計画を立てましょう。
IT導入補助金は、日本の労働力人口の減少や、他国と比較して労働生産性が低いことを背景として立ち上がりました。
特に中小企業では紙文化が根強く残っており、システム化やIT化が進んでいません。
それが残業の温床となっており、場合によってはサービス残業にもなっています。
IT導入補助金は悪しき文化を払拭し、従業員が仕事に対して高いモチベーションを維持するきっかけとなります。
また、単調な業務から解放されて、顧客中心のビジネス展開ができるため、事業の拡大も見込めます。
ただし、事業を成功させるためには、販促やマーケティング活動が欠かせません。
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