飲食店や小売店など、これまで実店舗で十分集客できていた会社や個人事業主が、ECサイトを構築して販路を広げる動きが加速しています。ECサイトの構築を任せられたマーケティング、販促担当者は、以下のような疑問を持っているかもしれません。
「ECサイトはどのように作ったら良いのか?」
「無料のサービスで目的を果たすことができるのか?」
「相場はどれくらいなのか?」
Amazonや楽天などのショッピングモール以外に、BASEやSTORESなどで自前のECサイトを無料で作ることが可能です。
この記事では、初心者に向けたECサイトの作り方を解説します。
目次
ECサイトを作る際は、年商を決めることが重要です。1億円程度であれば、FacebookなどのSNSや、BASEなどの無料ASPを使うのが良いでしょう。初期・運用費を抑えてECサイトを作ることができるためです。
20億円程度を見込んでいるのであれば、クラウドECの活用を推奨します。数十億、数百億円規模を想定している場合は、フルスクラッチで作るのが良いでしょう。
各サービスの違いを表にまとめました。以下を参考にして何で構築するかを決めてください。
ECサイト | 初期費用 | 月額費用 | カスタマイズ性 | サービス例 | 想定年商 | 求められるリテラシー |
SNS | 無料 | 無料 | × | 1億円程度まで | SNSをストレスなく扱える | |
無料ASP | 無料 | 手数料 | × | BASESTORES | 1億円程度まで | 目的に沿った情報を自分で収集できる |
有料ASP | 10万円程度 | 10万円程度 | × | MakeshopFutureShopショップサーブ | 1億円程度まで | 目的に沿った情報を自分で収集できる |
オープンソース | 無料 | 10万円~ | 〇 | MagentoEC-CUBE | 5億円程度まで | 目的に沿った情報を自分で収集できる |
クラウドEC | 300万円~ | 10万円~ | 〇 | ebisumartGMOクラウドEC | 20億円程度まで | ベンダーにEC事業の業務フローを説明できる |
パッケージ | 500万円~ | 10万円~ | 〇 | ecbeingEC-Orange | 1億円程度から | ベンダーにEC事業の業務フローを説明できる |
フルスクラッチ | 数百万円~数千万円 | 数万円~数十万円 | ◎ | – | 規模に合わせて作成可能 | サーバー、決済サービス、セキュリティなどサイト構築からEC運用までが一通り理解できる |
※月額費用に決済手数料は含まれていません
それぞれのサービスの違いを詳しく解説します。
MetaはFacebookとInstagramから商品を直接、閲覧、検索、購入できるサービスを開始しました。ショップ機能を利用すると、SNS上で商品のプロモーションができ、実店舗の販促活動の延長線上で、ユーザーをECへと誘導できます。
インプレッションやエンゲージメントなどの分析ができ、購買行動に結びついたデータの洗い出しが可能です。キャッチコピー、商品説明、画像、イラストなどのPDCAを回すことができます。
ショップ機能は簡単に商品を掲載し、運用を開始することができます。初期・運用コストを抑えられるため、スモールスタートにぴったりなサービスです。
Web上にECサイトを作る最も手軽なツールの一つです。BASEやSTORESが代表的なサービスです。直観的にECサイトを構築でき、専門的な知識は必要ありません。
ユーザビリティにも優れており、買い物をするユーザーがストレスを感じにくい作りになっています。
BASEは無料で始めることができますが、2022年4月から有料プラン(グロースプラン)が登場しました。有料プランは月5,980円です。違いは決済手数料とサービス利用料です。以下のようにまとめることができます。
【BASEのプランの違い】
〇無料プラン
決済手数料:3.6%+40円
サービス利用料:3%
〇有料プラン
決済手数料:2.9%
サービス利用料:5,980円(固定)
無料と有料を使った場合のシミュレーションが以下の表です。単価5,000円の商品をいくつ販売すると、有料プランの方が有利になるでしょうか。
30個販売すると、有料プランの方が得することがわかります。注意したいのは、販売個数が手数料の違いを生むことです。売上高ではありません。
■BASEのプランによる手数料の違い
販売個数 | 無料 | 有料 |
10 | ¥3,700 | ¥7,430 |
15 | ¥5,550 | ¥8,155 |
20 | ¥7,400 | ¥8,880 |
25 | ¥9,250 | ¥9,605 |
30 | ¥11,100 | ¥10,330 |
35 | ¥12,950 | ¥11,055 |
40 | ¥14,800 | ¥11,780 |
45 | ¥16,650 | ¥12,505 |
50 | ¥18,500 | ¥13,230 |
無料ASPでどのプランを選ぶかは、単価と想定販売数を加味してシミュレーションを組むと良いでしょう。
STORESのプランの違いは以下のようになっています。
【STORESのプランの違い】
〇無料プラン
月額利用料:無料
決済手数料:5%
スピードキャッシュ利用料:3.5%
〇有料プラン
月額利用料:2,178円
決済手数料:3.6%
スピードキャッシュ利用料:1.5%
有料ASPの代表的なサービスに、Makeshop、FutureShop、ショップサーブがあります。無料ASPに比べて機能面で充実しており、外部ツールと連携することが可能です。例えば、FutureShopはWEB接客やLINE Pay、楽天ペイなどと連携することができます。
多くのサービスでSEO、集客対策がなされていることが多く、ECで事業拡大を計画してい
るなど本腰を入れてECサイトを作りたい人に向いているサービスです。
ただし、拡張性の面で限界があります。業務効率を向上するための自動化などに対応することができないことがあります。
外部に公開されたソースコードを使ってECサイトを構築する方法です。よく使われているものにMagentoやEC-CUBEがあります。無料で拡張性が高い点が最大のメリットです。
ただし、インストールしたプログラムのカスタマイズにはコードを理解する高度な知識が求められます。サーバー、セキュリティ管理の経験も求められるため、社内に知見を持つ管理者を置く必要があります。
構築することそのものに費用はかかりません。ただし、ドメイン、サーバーの利用料、決済手数料などが発生します。
サイト構築、サーバー管理などに精通する人が社内にいて、拡張性のあるECサイトの構築と運用を考えている場合は、オープンソースの利用を推奨します。
クラウドECは、クラウドプラットフォームを使ってECサイトを作るサービスです。オープンソースはサーバー管理が必要になりますが、クラウドにはそれが必要ありません。
クラウドECはシステムが自動的に更新され、時流に合わせた機能がついている点がメリットです。ショッピングカート、決済、受注管理、顧客管理、メール配信機能などの運用に必要なものは基本的に装備されています。
クラウドECは初期費用として300万円程度かかるのがほとんどですが、更新する手間がかからないことや、拡張性が高いこと、必要な機能がすべてそろっていることを考慮すると、長期的に見てコストパフォーマンスは高いと言えます。
ECを事業計画などに盛り込んでおり、ある程度の予算や人員を確保できる場合におすすめできます。
ECパッケージとは、ECサイトの構築や運用に必要な機能を備えたシステムのことです。カート機能や受注管理、売上管理、顧客管理、在庫管理など、規模が大きいECサイトの運用に必要な機能を揃えることができます。
ECサイトを運用した後にページのレイアウトを変更し、ユーザーの導線を整理できるなど、目的に沿ったECサイトを構築できます。拡張性を高められることが特徴です。
有名なサービスにecbeingがありますが、ABC-MARTやJAL、SHIPSなどの大手企業が利用していることで知られています。
ZOZOTOWNのようにECサイトで巨大なビジネスを展開する計画を立てているのであれば、フルスクラッチを推奨します。フルスクラッチは最も費用がかかり、要件整理から構築まで最低一年は必要になるでしょう。一大プロジェクトとなることは間違いありません。
必要な機能は満たすことができ、提供するサービスに最適化したECサイトを構築することができます。例えば、予約システムなどの通常のECにはない機能を入れたい場合、スクラッチで初期の要件に盛り込む必要があります。
既存サービスに追加機能として入れることは不可能か、多額の費用がかかるでしょう。
また、売上を最大化するためにPDCAを繰り返したい企業はフルスクラッチが良いでしょう。検証結果を反映させやすいためです。
すぐにECサイトを構築、運用できるSNSと無料ASPの作り方を紹介します。
FacebookショップはFacebookのコマースマネージャーを利用します。
コマースマネージャーでショップ作成ページを開き、他のWebサイトでチェックアウトを選択。新しいページを作成を選び、メールアドレスを入力。新しいカタログを作成し、設定を終了すると審査に入ります。合格すると、アイテムが追加できるようになります。
無料ASPは、サービスに登録をし、テンプレートを選ぶという簡単な設計になっています。テンプレートを決めたら、商品を登録して運用開始です。
ECサイトを作るのに必要なのは、イメージ画像、商品画像、ブランドや商品をアピールするテキストだけです。煩雑な審査や設定は必要ありません。
スモールスタートと呼ぶに相応しい仕組みになっています。
ECサイトで重要なのは機能よりもデザインと言われています。ユーザーが利用しやすいECサイトを作り、商品の見せ方に工夫を施し、ユーザーの購入を手助けすることで購買率の底上げを図ることができます。
どのようなところに注意したら良いのでしょうか。
考慮すべきポイントは3つあります。
見た目がおしゃれ、動きのあるデザイン、最先端技術を入れたサイト構成など、無意味にデザイン性を高めることが購買行動を促すわけではありません。その商品を扱うブランドがどのようなものなのかを、ユーザーに伝えることが重要です。
色調、ロゴ、画像、キャッチコピーに統一感を持たせ、ユーザーをECサイトの世界観に引き付けることを意識してください。商品を販売するのが最終的な目的であることは間違いありませんが、その背景にあるものをサイトで表現することでブランドを構築できます。
「北欧、暮らしの道具店」のECサイトでは、販売する商品を使った暮らしの提案をコンテンツとして投稿しています。これも一つのブランディングです。商品を押し売りするのではなく、世界観を提案し、ユーザーからの共感を得て購買へと結びつけています。
意図したコンテンツにユーザーを誘導するデザイン性を確保するなど、あらかじめ運用方法を固めておくとECサイトを作りやすくなるかもしれません。
ターゲットを明確にすることは、ECサイトに限らずすべてのサイトにとって重要です。ターゲットは共通理解を生むためです。ECサイトの構築や運用には、様々な人が関わります。
デザイナーにいくら商品の説明をしても、理解の仕方は人それぞれです。しかし、ターゲットを伝えると議論は活発化します。「〇〇が特徴の化粧品」というよりも、「放課後、渋谷のセンター街で遊ぶ女子高校生がターゲットの化粧品」とした方がイメージが湧きやすくなります。
ターゲットはできるだけ細かく設定した方が良いと言われていますが、「25歳千葉市在住の会社員で身長159センチ、趣味は〇〇…」などと、無駄な設定を盛り込んでペルソナ像を作りこんで終わり、ということも少なくありません。
ターゲットを設定する際は、チームの共通理解を得ることを目的とするのが良いでしょう。その情報からどんなイメージが湧き上がるか、そのターゲットが利用する競合他社はどのようなECサイトを構築しているか。必要な情報が得られることに重点をおいてください。
可能な限り商品アピールをテキストでしようとすることがありますが、ユーザーは多くの情報を一度に処理できません。伝えたい情報に絞る方が得策です。
ECサイトを作る前に、商品の特性を改めて考えるのが良いでしょう。競合と比べて機能が優れているのか、コストパフォーマンスに違いがあるのか、原料に特徴があるのか、物流に違いがあるのかなどです。
ECサイトの利用者が増え、別のサービスへの移行を検討することがあります。商品や顧客データを新しいシステムに移すことは可能です。ただし、データの形式が一致しないためにすべてを引き継げないこともあります。
移行する際は、移したいデータの対象範囲を決め、エクスポートして新システムにインポートします。一般的に無料ASPからクラウドなどへの移行が多く発生しますが、その場合はベンダーに相談するのが最も確実かつ早い方法です。
その他、注意すべきポイントが2つあります。
多くのユーザーはログイン情報をブラウザに登録しています。ECサイトにアクセスすると、自動的にログインできますが、移行後はそれができません。ユーザーの離脱率が高まる可能性があります。
メールやSNSで移行したことを知らせ、ユーザーが混乱しないように準備することが重要です。
コンテンツを定期的に公開し、特定のキーワードで流入していたとしても、その施策が引き継げるわけではありません。流入数は低下する可能性があります。
移行を検討する際は、集客力が弱まる可能性があることを加味してください。
ECサイトを作る際に参考になる書籍を紹介します。
D2CやECのマーケティング支援を行う株式会社いつも.による、ECサイトのノウハウ本です。ECの経験がほとんどない担当者が、突然ECの立ち上げや運用の仕事を振られることを想定して書かれています。
EC業界の全貌、売上高を増やすノウハウや秘訣などを図を交えて分かりやすく解説してくれます。必要最低限の情報が盛り込まれているので、新卒社員やWeb知識が薄いマーケティング担当者などは必携とも言えます。
会社に一冊置いておいても損はない本です。
Webディレクター、マーケターとして活躍している坂井和広氏による、サイトの作り方と運用方法の指南書です。
デザインやコンテンツ作成のコツだけでなく、SEOやSNSを運用して集客する基本的な施策について書かれています。
「新しく事業を始めネットを使って集客したいけれど、何にどこから手をつけていいのかわからない」
「ネットのことは全くわからないが、ECサイトを使えば売上に繋がるの?」
「ECサイトを自分で作りたいんだけど、どうやって作ったらいいか」
「今までWebサイトを自社でやってきてお問い合わせは全くない。本当にこのまま続けて集客できる?」
「売れるサイトと売れないサイトはどこが違うの?」
ECの最前線で経験を積んだマーケターがこうした質問に答えます。
ECサイトの始め方や疑問について答える初心者向けの本です。弁護士として活躍し、ファイナンシャルプランナーの資格も持つ岡本正氏が監修している通り、法律やお金に関するアドバイスも盛り込まれています。
BASEやSTORES等のサービスを使ったサイトの作り方、画像処理、編集、SNSを使った導線の作り方、発送時の注意点など、スモールビジネスオーナーに向けた情報が満載されています。
これからECサイトを作りたい人、作ったものの運用が上手くいっていない人に最適な一冊です。
Webプロデューサーなどとして幅広く活躍する田中正志氏の本です。ECサイトを構築して成功した12人の女性オーナーに取材した内容が掲載されています。それぞれの女性たちのスケジュールが公開されており、参考になることは間違いありません。
この本のポイントは、女性12人すべてがECサイトやマーケティングのプロフェッショナルではないこと。メールやブログなど、ごく当たり前なITリテラシーを持つ人が、ECサイトを構築して成功するための考え方、基礎知識の習得の方法を指南しています。
ただし、技術を身に着けるというよりも、運営方針やコンセプトの確立に力点を置いており、成功するための本質がどこにあるのかを示唆しています。
アフィリエイトの専門家として独立した染谷昌利氏が、ビジネスの原理や自分の頭で考える能力を伸ばすために書いた本です。応用力や実践力を重視し、利益を上げ続けることを追及しています。
ECサイトを成功に導く方法をあらゆる角度から検証、解説しています。情報量が多く、難易度が高いために一度で理解しきれないかもしれません。何度も読み返す価値のある内容です。
人とお金が集まる成功の要点を60のポイントとともに解説。明文化する技術が高く、経験者でもハッとする内容が多く盛り込まれています。
ECサイトを作る場合、「どうせなら大掛かりなものを作ろう」と考えがちです。夢が膨らむのでそうなるのも分かりますが、まずは無料ASPを使ったスモールスタートがおすすめです。
構築の手間がほとんどかからず、すぐに始めることができるからです。ECサイトは作って終わりというものではありません。集客し、商品や在庫を管理し、収益を生まなければなりません。運用の方が遥かに力がかかります。構築を手早く済ませ、運用に集中した方が良い経験が積めます。
取扱高が増加し、機能面でも限界がきたと感じたら、クラウドやパッケージ、スクラッチなどへの移行を検討してください。ほとんどの場合、必要なデータの移行は可能です。
スムーズにネットショップを始めたい場合は、LINE上にECサイトを開設できる『Lea = レア』がおすすめです。
『Lea = レア』は、誰でも簡単にECサイトを構築できることをコンセプトにしたサービスです。
立ち上げから運用まで、担当者の手を煩わせることがほとんどありません。
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