事業再構築補助金は、業態転換、事業・業種転換、事業再編成など、事業内容の大転換を行うことを目的とした補助金です。
新型コロナウイルス感染拡大以降、飲食業界や宿泊業界などの商環境が激変したことから、中小企業を救済するために設けられました。
事業再構築補助金は上限額が最大1.5億円に引き上げられるなど、事業者にとって恩恵の大きいものですが、細かな要件が設けられています。要件や審査内容の理解なしに申請するのは無理があるでしょう。
この記事では、事業再構築補助金の詳細について詳しく解説します。
目次
事業再構築補助金は2021年度からスタートしました。
2023年度においては、成長枠、産業構造転換枠、サプライチェーン強靭枠が新設されました。
年度ごとに申請類型が変更になるため、注意が必要です。
2023年1月16日に公募を開始した第9回の事業再構築補助金は、2023年3月24日で申請を決め切りました。
第9回は2022年12月2日に閣議決定した第二次補正予算に組み込まれた、5,800億円の追加予算が原資となっています。
第10回以降の補助金の内容がどのようなものになるのかは、現時点では未定です。
もともとは2022年4月から2023年3月までの時限的な補助制度でした。
第9回は延長によって発生したものです。そのため、第10回の公募にも期待できます。
類型と要件は以下の通りです。
※経済産業省 中小企業庁「事業再構築指針の手引き」より
ポイントは補助金を用いて立ち上げた事業が、総売上高の10%を占めることを求めるなど、売上高の要件が設けられていること。
3~5年間の事業計画期間を通過した後、求められる売上を達成しなければなりません。
売上高10%等要件は、最低条件となります。
また、事業転換、業種転換、業態転換の3つの定義を必ず把握してください。
事業転換は業種を変更することなく、事業を変更することを指します。
例えば、日本料理店がコロナ禍に強いことが明らかになった焼肉店に転換することが該当します。
業種転換は、新たな製品等を製造することで、業種を変更することを指します。
例えば、産業用機械を製造している会社が、工場を閉鎖して敷地内にデータセンターを建設する場合が該当します。
業態転換は製造等の製造方法を変更することを指します。
例えば、ヨガ教室を行っていた会社が、教室を縮小してオンライン化による拡大を目指す場合が該当します。
補助対象となる経費にはどのようなものがあるでしょうか。
基本的には建築物や機械・装置、システム構築費がメインとなります。
広告宣伝費、販促費、専門家のアドバイスフィーは補助的なものであり、固定資産として計上するものが主な経費になると考えてください。
機械・装置やシステム構築に関連するリースも補助対象となります。
ただし、補助事業実施期間に要した経費に限定しているので注意が必要です。
自動車等の車両の購入費、修理費、リース費などは補助対象になりません。
車両に載せる設備や、設備の設置に必要な費用は補助の対象となります。
事業再構築補助金を活用し、事業者が成長するイメージをつかみましょう。
【新分野展開】
都市部の駅前にビジネスホテルを運営していたものの、テレワークの増加で需要が縮小してしまった。客室の一部をレンタルスペース、小会議室として提供したい。 事業再構築補助金でリニューアル費用やオフィス機器を導入し、顧客に快適なビジネス環境を提供したい。 |
過去にレンタルオフィス業を行っていなければ、要件を満たします。
また、ホテルとレンタルオフィスでは性能が異なることから、新規性として認められます。
市場の新規性においても、宿泊業とレンタルオフィス業で異なるため、要件を満たしています。
新分野展開においては、売上高の10%となることが求められます。
3~5年の事業計画期間終了後、売上高が10%以上となることを計画に盛り込む必要があります。
【業態転換】
金型を製造している事業者が、業績不振を打破するため、加工技術を活用して産業用ロボットの製造を開始したい。 ロボットの製造に必要な機械・装置を導入する必要がある。 |
産業用ロボットを過去に製造した実績がなければ要件を満たします。
金型と産業用ロボットは用途が異なるため、市場の新規性要件も満たします。
金型とロボット製造は、日本標準産業分類の再分類ベースで異なる分類がされています。
そのため、5年間の事業計画期間終了時点において、ロボット製造業の売上構成比率が、日本標準産業分類細分類ベースで最も高くなる計画を策定しなければなりません。
(参考)日本標準産業分類
【大分類】E製造業⇒【中分類】生産用機械器具製造業⇒【小分類】269その他の生産用機械・同部分品製造業
⇒【細分類】2691金属用金型・同部分品・附属品製造業…2694ロボット製造業…(細分類ベースで事業転換)
第9回の類型による補助金額や補助率は以下の通りです。
類型 | 補助金額 | 補助率 |
通常枠 | 【従業員数20人以下】100万円~2,000万円 | 中小企業者等 2/3 (6,000万円を超える部分は1/2) |
通常枠 | 【従業員数21~50人】100万円~4,000万円 【従業員数51~100人】100万円~6,000万円 【従業員数101人以上】100万円~8,000万円 | 中堅企業等 1/2 (4,000万円を超える部分は1/3) |
大規模賃金引上枠 | 【従業員数101人以上】8,000万円超~1億円 | 中小企業者等 2/3 (6,000万円を超える部分は1/2) 中堅企業等 1/2 (4,000万円を超える部分は1/3) |
回復・再生応援枠 | 【従業員数5人以下】100 万円 ~ 500 万円 【従業員数6~20 人】100 万円 ~ 1,000 万円 【従業員数21人以上】100万円 ~ 1,500万円 | 中小企業者等 3/4 中堅企業等 2/3 |
最低賃金枠 | 【従業員数5人以下】100 万円 ~ 500 万円 【従業員数6~20 人】100 万円 ~ 1,000 万円 【従業員数21人以上】100万円 ~ 1,500万円 | 中小企業者等 3/4 中堅企業等 2/3 |
グリーン成長枠 | 中小企業者等:100万円~1億円 中堅企業等 :100万円~1.5億円 | 中小企業者等1/2 中堅企業等 1/3 |
緊急対策枠 | 【従業員5人以下】100万円~1,000万円 【従業員6~20人】100万円~2,000万円 【従業員21~50人】100万円~3,000万円 【従業員51人以上】100万円~4,000万円 | 中小企業等 3/4 中堅企業等 2/3 |
事業再構築補助金を活用して、事業の転換や拡大を行った事例を紹介します。
八芳園は1943年に創業を開始した老舗の結婚式場。
レストランの運営や企業宴会、国際会議の需要も獲得しています。
主力はブライダルですが、少子高齢化やナシ婚カップルの増加により、年々需要は縮小していました。
八芳園は最盛期で3,000件の結婚式を受注していましたが、コロナ前は2,000件まで減少していました。
更に新型コロナウイルス感染拡大によって、結婚式やレストランの需要が急激に縮小します。
八芳園はブライダルの中長期的な市場縮小と、オンライン化・非対面化が目下の課題であると認識しました。
その課題解決として、オンラインサービスへの転換し、ロボット設備を導入して食の配送事業を開始。イベントと食の総合プロデュース企業として生まれ変わることを決めました。
その設備投資に必要な資金の一部を、事業再構築補助金で賄いました。
八芳園は非接触型イベントの開催、オンラインイベントシステムの外販、ミールキットの製造販売の3つを軸に事業計画を策定し、補助金による支援を受けました。
ゲストハウスますきちは、愛知県瀬戸市にある宿泊事業者。
陶芸家が暮らしていた築140年の古民家を改装してオープンしました。
事業は民泊であるため、年間180日という営業制限があります。
基本的には金土日か長期休暇期間中しか営業ができません。
また、民泊は楽天トラベルなどの大手予約サイトを活用できないという課題がありました。
そこで、古民家の貸し出しから個室中心の部屋構成へと変更。
ファミリー・ビジネス需要を取り込もうと考えました。
事業を民泊から旅館業に転換し、個室を増やそうというものです。
消防法に適合した建物に改修する費用130万円、建築基準法に適合する改修費用485万円など、投資額の一部を補助金でカバーしました。
M&Aナビは、企業売買の仲介を行う会社です。
売却を希望するオーナーを見つけ、買収を希望する相手との交渉役を担います。
後継者問題に悩む中小企業が多く、市場は拡大しているものの、売却案件数が競合よりも少ないという課題を抱えていました。
そこで、仲介業務を非対面で行えるマッチングプラットフォームの構築を計画しました。
事業をプラットフォームに集中することにより、属人的な仲介業務を縮小することができ、売却案件の獲得に人員を割くことができます。
システム開発や構築にかかる費用の一部を補助金で賄いました。
事業再構築補助金は、事業拡大を目指す多くの企業に開かれた制度です。
活用方法次第では、新事業の売上高が既存事業を上回ることもありえます。
ただし、事業を成功させるためには、販促やマーケティング活動が欠かせません。
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