いつの時代も経営課題として挙がるのが人材獲得、育成の難しさです。
特に就職氷河期が終焉を迎えて有効求人倍率が1倍を越えた2006年以降、多くの企業が頭を悩ませるようになりました。
しかも、Z世代と呼ばれるデジタルネイティブ世代が、社会人として活躍する時代を迎えました。
昭和や平成の常識として浸透していた教育方法は通用しません。
価値観や仕事観がまったく異なるためです。
新たな時代を象徴する人事評価制度が注目されています。ノーレイティングです。
この記事では、ノーレイティングの概要と実践法、その効果を解説します。
目次
ノーレイティングは、数字やランクなどによる評価を行わない人事評価制度です。
従業員と上司のマンツーマン面談(1on1面談)を月1回のペースで行い、信頼構築をしながら評価する手法です。
ノーレイティングは透明性を重視した評価方法です。
数字による企業の一方的な評価は、会社の評価と従業員の自己評価に乖離が生じるため、軋轢を生みやすいという問題を抱えていました。
それが不信感に繋がり、仕事のモチベーションを失ってしまうのです。
定期的に開催されるマンツーマン面談であれば、管理職や会社の評価と主観的な評価の擦り合わせができます。
従業員は客観的な意見に耳を傾けることで、自分の良い点・悪い点を正確に認識します。
これが透明性を重視していると言われる理由です。
しかも、マンツーマン面談で管理職は従業員の仕事の進捗、心理状態を把握できるため、軌道修正を図ることができます。
実務面での失敗を防げるのです。
デジタルネイティブ世代の特徴の一つに、合理性を求めることが挙げられます。
数値による評価を行うと、なぜそのような評価を行うのか、どのようなロジックなのかといった感情を抱くのです。
会社が明確な答えを出せるのであれば、問題ありません。
しかし、従業員が真面目であればあるほど、「自分は〇〇に貢献したのに評価されていない」と考えます。
つまり、個人に最適化した答えがなければ、会社は100%の回答をしたことにならないのです。
数字による評価は会社にとって一定の合理性があります。
しかし、個人に最適化しているわけではありません。
ノーレイティングが注目を集めている背景に、従業員の価値観の変化があります。
ノーレイティングのデメリットの一つに、管理職に高い能力が求められることが挙げられます。
従業員の評価基準が管理職にすべて任されてしまうからです。
しかし、以下の8つの成長イメージを管理職と従業員が共有し、それを基準として話を進めるとスムーズに進められます。
ノーレイティングを成功させるポイントは、会社の評価基準を無理強いしないこと。
従業員と会社の評価基準を統合させることに注力します。
その評価基準を擦り合わせるのに便利なのが、この8つの要素です。
従業員のキャリアプランを明確にしたうえで、仕事とプライベートを充実させる方法を模索します。
仕事だけでなく、プライベートまで踏み込むと信頼構築がしやすいでしょう。
キャリアプランに沿った視野、専門性の獲得も重要です。
この2つの要素が明確になると、資格取得や昇進試験へのチャレンジなど、仕事以外でやるべきことが見つかります。
仕事以外のことにチャレンジするのであれば、目先の仕事を効率化しなければなりません。
そのためにはコミュニケーション能力が必要になります。
このように、従業員一人ひとりの特性に合わせ、評価基準を定めましょう。
ノーレイティングは、ボトムアップ型の組織体系と見ることもできます。
なぜ、ボトムアップが注目を集めているのでしょうか?
その理由の一つとして挙げられるのが、売り手有利の市場形成です。
売り手有利の市場とは、有効求人倍率が上がって転職や就職希望者に有利な時代が到来したということです。
かつて「1社に最低でも3年はいた方が良い」などと言われた時代がありました。
ある程度の経験を積まなければ、他の会社に転職しづらくなるというものです。
確かに、就職氷河期時代は何度も転職する人を忌避する動きがありました。
しかし、時代は変わりました。
マッチングサイトや転職エージェントが溢れ、能力のある人は素早く就職先を見つけることができます。
会社は従業員や転職者に選ばれる立場となっているのです。
トップダウン型の組織運営で、社員が黙ってついてくる時代は終わりました。
ボトムアップ型で従業員と会社の評価基準を擦り合わせることが重要なのです。
ノーレイティングは従業員を評価する方法の一つですが、仕事(実務)を進める上でも有用です。
チームが一丸となって進めていたプロジェクトが崩壊し、クライアントがストップをかけて中断せざるを得なくなった。
そのような経験は誰しもがあるかもしれません。
その原因を調査したところ、社員の一人が仕事を抱え込み、それを誰にも相談できずに崩壊したということが少なくありません。
そして誰にも相談できないというのは、入社して数カ月から1年程度の新人だというのもよくあることです。
このような社員は、能力が不足しているのではなく、コミュニケーションの図り方が分からないのです。
ノーレイティングはマンツーマンの面談を月に1回重ねます。
そこで意思疎通が図れるのです。
従業員の中には過剰に管理職を怖がっているケースが少なくありません。
それが相談できないことに繋がるのです。
ノーレイティングは、管理職が仕事の進捗状況を確認し、従業員がどのような考え方、スタンスで仕事をしているのかを把握する場になります。
組織構築や業務フローを見直すきっかけにもなります。
面談を実施する人は現場に立っているトップやリーダーが相応しいでしょう。
ノーレイティングの具体的な実施方法を解説します。
押さえるべきポイントは3つあります。
詳しく解説します。
月に1回の面談を行ってください。
ここでは会社、管理職目線で話をしないのが重要です。
従業員と会社の評価基準を統合することを心がけてください。
先ほど紹介した8つのポイントを基準として話し合います。
従業員が仕事において何を目指しているのかが最も重要です。
仕事をする目的、ゴールはどこにあるのかを明確にしましょう。
その目的を達成するには視野を広げる必要があり、効率性や専門性を高める必要があると話すのです。
話の内容はスプレッドシートなどにまとめておき、次の面談に活かします。
KPTを明確にすることも重要です。
KPTとは、続けるべきこと(Keep)、抱えている問題(Problem)、次にトライしたいこと(Try)の3つをまとめたもの。
面談でこれらを必ず振り返ってください。
各要素は複数出して構いません。
発言内容はデータに残し、面談時に共有するようにします。
KPTを出す際に、「〇〇を意識する」「××を頑張る」「△△をもっとやる」といった抽象的な内容になってしまいがち。
これをいかに明確にするかが、管理職の腕の見せ所です。
例えば、個人プレーが目立つ従業員がいるとします。
面談で「チームで進めることを意識する」と言ったらどうしますか?
まずは自分が抱えている仕事を分解して可視化し、不得意な仕事やスケジュールが遅れている仕事を別の社員に依頼する、このようにすると具体性が出てきます。
更にアクションプランに落とすのが重要です。
先ほど、「チームで進めることを意識する」を2つの要素に分解しました。
ここから具体的なアクションプランを作ります。
例えば、自分が抱えている仕事の内容をスプレッドシートに落として可視化します。
そこにスケジュールを足し、進捗状況を確認します。
進捗が遅れているものは赤字にし、誰に依頼したのかを明記します。
これにより、仕事をチームで進められているかどうかが可視化できます。
それが評価に繋がるのです。
ノーレイティングはいかにして具体性を持たせられるかが成功のカギ。
アクションプランは必ず作るようにしましょう。
それがなければ、評価ができません。
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ノーレイティングは今の時代に合わせた人事評価制度です。
会社の一方的な評価方法を脱し、一人ひとりの特性に合った仕組みを設けてください。
従業員はやるべきことが明確になり、具体的な手順やステップが見えると、楽しんで仕事をするようになります。
やらされている、という意識も薄くなり、成果を出しやすくなります。
もっと詳しく知りたい方は、ぜひ一度お問い合わせください。